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万葉神事語辞典


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項目名 わらび
表記
Title
Warabi
テキスト内容 日本全国の山野に分布する多年草、イノモトソウ科のシダ植物。早春に地中から出る拳状に巻いた新葉を「さわらび」という。万葉集巻8「春雑歌」の冒頭を飾る志貴皇子の「石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも」(8-1418)が有名であるあまり、万葉の春を代表する景物と捉えがちだが、万葉集にはこの1例しかない。ただ、歌に詠まれなくとも、『和名抄』に「薇蕨《和良比、初生無葉、而可食之、置熱湯中令熟、然後可噉之》」とあり、薇(ぜんまい)と共に、新芽を採って食す食用の山菜として親しまれていたことは確かなようである。風土記には、単独で「蕨」と記す例以外にも、「凡そ諸の山野に在らゆる草木は、…(中略)…葛根、薇蕨、藤、李…(中略)…」(出雲国神門郡)の如く、「薇蕨」と表記する例が複数見える。『和名抄』にある如く、これを「わらび」とよむとすれば、蕨と薇とがどこまで区別されていたかは不明と言わざるを得ない。万葉集には他に、「菜」や「春菜」を詠んだ歌が9首ある。こうした歌の中には、わらびやぜんまいを指すものも含まれていると考えられる。
執筆者 新沢典子