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万葉神事語辞典


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項目名 よる
表記
Title
Yoru
テキスト内容 夜は時間区分として昼と対になる日没から日の出までの暗い時間帯を指す。上代では昼を中心とする時間のいい方と夜を中心とする時間のいい方があった。昼を中心とする時間区分は「朝」「昼」「夕」、夜を中心とする時間区分として「夕べ」「宵」「夜中」「暁」「明日」というように捉えていた。夜の始まりの時間「夕べ」は「夕」と同義であり、夜の終わりの時間「明日」は「朝」とほぼ同義である。このように「夜」を中心とする時間区分の語が細分化されていることからも上代では「夜」は重要な時間帯であったようだ。万葉集には官人橘諸兄の班田の仕事に携わっていた当時の歌に「昼は田賜びて」(20-4455)と対の形で「夜の暇に採める芹これ」と歌っている。ここでは「暇」という官人用語を使用している。夜と神事との関係を示唆するものとしては夢の話(常陸国風土記、那賀郡茨城の里免時臥山)や夕占(卜)(13-3318、11-2613、4-736、16-3811)夕衝占(3-420)夜占(11-2686)を合わせ考えなければならない。夜の始まりの時間「夕」「夕べ」に「占」が行われるのである。常陸国風土記の話は努賀□[田+比]咩が雷神との神婚によって一夜にして懐妊し、小さい蛇を生む。この小さい蛇は「明くれば言とはぬが若く、闇るれば母と語る」という不思議な行動をとる。この母と伯父は神の子だと判断して、土器の入れ物に小さい蛇を入れて土で盛った祭壇に祭った。蛇の子は大きくなり父の元に帰ると言い伯父を震殺し、天上に昇ろうとしたところ母が驚き蛇の子を入れていた土器を投げつけたところ天に昇ることが出来ずに山の峰に留まったという話である。父である神も夜に通ってきていた。また、蛇の子は「闇るれば母と語る」のである。神の真意が語られるのが夜という時間であり、その始まりの時間夕から占が行われるのである。「夢占」は夜に神が語ったものと考えられていた可能性がある。
執筆者 吉田比呂子