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万葉神事語辞典


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項目名 よみがえる
項目名(旧かな) よみがへる
表記 生還る
Title
Yomigaeru
テキスト内容 一度息絶えた者が再び息を吹き返す。生き返る。蘇生する。黄泉から還るの意。万葉集では法師通観の、「大海原の沖へ放したとしてもどうしてこれ(乾鰒)が生き返ることがあろうか」という意の歌(3-327)に「よみがへりなむ」と見え、ヨミガヘリには「死還生」の文字があてられている。題詞に拠ればこの歌は、ある少女達が通観に包んだ乾鰒を贈って戯れに「咒願」を依頼した、その依頼に対する答えであった。「咒願」は呪文などを唱えて祈願することで、題詞・歌の内容から、ここで少女達が依頼したのは乾鰒を生き返らせることだったと推測される。少女達の依頼が「戯れ」のものである以上、これは一種の遊び、乃至はからかいなのだろうが、それでもこの1例は、この当時、法師の「咒願」によってよみがえりが達せられるとする考えが存在していたことを窺わせる。これについては、『霊異記』にも、食べかけの蟹や牡蠣を買い取って、法師に「呪願」を請い、海に放つという話がいくつか残されている(『新全集』頭注)。また紀では、敏達天皇12年10月条に、任那復興のために百済から召された日羅が同行の百済の使者達に殺された後よみがえる(「蘇生」)話が伝わる。蘇生した日羅は、自分を殺した者が同行の百済の使いであって新羅の者でないことを告げると直ちに息絶えるので、これを厳密な意味でのよみがえりとするには疑問も残るが、日羅は殺される直前まで身体から光を発し、それが炎のようであったという。『大系』頭注では、この点に何らかの説話的根源があるのではないかとし、また日羅が後に弥勒の化身であったとされることとの関連も指摘している。いずれにせよ、この日羅の身体的特徴が、一瞬のものではあれよみがえりの条件として働いていることは確かであろう。同様に、『霊異記』上巻第5段で「蘇(さ)め甦(い)き」た屋栖古(やすこ)の連も、その屍が不思議な香りを発したとされる。我が国の神話では、黄泉戸喫(よもつへぐひ)(記)をすると黄泉の国の住人となり二度と現世には還れないと考えられていた。法師による「咒願」や光・香りといった身体上の特殊性は、この黄泉戸喫(よもつへぐひ)の力を越えてよみがえりを実現させるものと考えられていたのであろう。
執筆者 渡部修