國學院大學
國學院大學デジタルミュージアム

万葉神事語辞典


はじめに    ≫凡例    ≫項目執筆者一覧    ≫収録項目一覧

詳細表示 (Complete Article)

項目名 よごと
表記 吉事
Title
Yogoto
テキスト内容 頌寿のことば。忠誠の誓言。ほめことば。ヨは、寿命・魂の意も。記に「悪事(まがごと)も一言、善事(よごと)も一言」(雄略記)とあり、コトバの託宣には善悪両面の強力な霊威があるとする言霊信仰。言霊は、コトバに宿る霊力であり、発言者の願う善悪の結果に向けて発動する特別な言語行為を示している。コトバに対する呪術的な信仰。吉事は、良い方向へと向かう言霊の発動。「齋(いは)ひの返事(かへりごと)の神賀(かむほき)の吉詞(よごと)」(「祝詞」出雲の国造の神賀詞)は神へのコトバをいうが、これもまた言霊の発動を信じ、儀礼の中での祝詞が言霊のこもるものとして認識されていたことを示している。また、その作用は神だけでなく、人間生活のさまざまな場面・行為の上にももたらされ、特に宣命など、天皇を祝福すると同時に服従を誓う言葉としてもある。759(天平宝字3)年の家持の歌(20-4516)は、年始に「降る雪」を「五穀の精」と意味付け、自然のしるし(事)が、コトバの力(言)によって理想的な未来を保証する構造をもつ。20-4516は、天皇の御世に吉事がたえず現れてほしいという祝福の言葉であると同時に、自身もその吉事の効果を得たいという二重の意味がこめられている。
執筆者 毛利美穂