國學院大學
國學院大學デジタルミュージアム

万葉神事語辞典


はじめに    ≫凡例    ≫項目執筆者一覧    ≫収録項目一覧

詳細表示 (Complete Article)

項目名 ゆり
表記 百合
Title
Yuri
テキスト内容 ユリの総称。ヤマユリは本州の北中部に多いが、関西方面ではササユリが多く、万葉集では特定は難しいが、ヤマユリ、ササユリのことを指すと考えられる。「後(ゆり)」にかかる序詞。「さ百合」の「さ」は接頭語。可憐な姿から、特に恋の相手である女の姿を暗示。「夏の野の繁みに咲ける姫百合」(8-1500)では、「夏野」「夏草」が、記に「夏草の相寝の浜」(允恭記)の枕詞に見られるように、男女の恋の場(歌垣の場)が強調される。記の神武天皇と伊須気余理比売との聖婚の場には「山由理(やまゆり)」が多く咲いていたとあるが、奈良平野部には山百合は自生していないため、この花は「ササユリ」を指すものか。749(天平感宝1)年5月9日の宴で「百合の花蘰」(18-4086)が捧げられるが、紀では、皇極天皇3年6月条に、その形状による瑞物としての百合献上記事がある。奈良・大神神社摂社・率川神社、狭井神社では初夏に百合の神事行われる。率川神社「三枝祭」(別名「ゆりまつり」)の起源は、大宝年間(701~703年)とされ、大神氏族の祭祀であったものが平安中期に中断し、明治に復興している。神事では、笹百合を飾った三本脚の樽(そん)と四本脚の缶(ほとぎ)(素焼きの土器)にそれぞれ白酒(しらき)、黒酒(くろき)が注がれ、左右に供えられる。「三枝」は、大倭神社注進状に「和名佐井草、古事記に山百合草の本名は佐韋草といふ也」とあり、百合を指す。また、狭井神社の社伝には、大宝年間に起源を持つ「鎮花祭」に関して、「百合草等の薬草を奉る特例あり」とある。「三枝祭」「鎮花祭」ともに疫病退散の儀礼の中で、百合は疫病を退散させる存在としてある。百合は、中国最古の本草『神農(しんのう)本草経』に見え、千金方(中国・唐)に「百合(ひゃくごう)病」の治療薬として登場。現代漢方では、滋養強壮、鎮咳の効能などが認められる。五節供と同様、薬草としての効能から神事に取り入れられたのであろう。
執筆者 毛利美穂
クリックすると画像を拡大表示します

ゆり