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万葉神事語辞典


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項目名 ゆめ
項目名(旧かな) いめ
表記
Title
Yume
テキスト内容 睡眠中に見える映像。寝て目に見えるので寝目という。夢は古くは幻想ではなく、現実を映し出すものと考えられた。記によると崇神天皇の時代に疫病が流行して民が死滅する状況であった時に、天皇が神床にいると大物主という神が夢に現れて、疫病を取り除く方法を教えたという。神床とは神と接触するための特殊な部屋であろう。古代では、神の意志を伺うために夢を見るという方法が取られていたのである。こうした夢が万葉集に入ると、「真野の浦の淀の継ぎ橋心ゆも思へや妹が夢にし見ゆる」(4-490)、「我妹子がいかに思へかぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる」(15-3647)のように、恋歌に多く展開するようになる。神の意志を積極的に嗅ぎ取ろうとする行為によるものであるが、深く思えば相手が夢に見えて来る、あるいは思う心があれば夢にでも通って来るはずだという歌が多く、このような理解は、夢により相手の思いの強弱を知ろうとするものである。このような夢の歌は、おそらく集団の掛け歌の要素を強く持つのであり、そこには「夢の歌流れ」ともいうべき夢を主題とした歌の流れ(歌の歌い継ぎ)が存在したものと思われる。また、「夢の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻き探れども手にも触れねば」(4-741)は、『万葉代匠記』が中国の伝奇小説である『遊仙窟』の一部だと指摘している。夢が万葉集に恋愛の道具として多く現れるのは、こうした恋愛小説や恋愛詩との関係が推測される。
執筆者 辰巳正明