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万葉神事語辞典


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項目名 やそしま
表記 八十島
Title
Yasoshima
テキスト内容 多くの島の意。古代において「八十」は実数ではない。一方で、仁徳紀30年、天皇と皇后が詠い交わしたとされる歌謡に「河隈(かはくま)に 立ち栄ゆる 百足らず 八十葉の木は 大君ろかも」との表現があり、100には足らない多くの数を示す数量感覚で用いられる表現であったこともうかがえる。また、「八十」は「氏」「神」「国」「瀬」「年」「船」「衢」など、様々な語と結びつき、その数の多さを表現する。「八十島」の語は万葉集に4例、風土記に1例ある。万葉集には、遣新羅使が瀬戸内海を島伝いに航行する際の歌に「海原を八十島隠り来ぬれども奈良の都は忘れかねつも」(15-3613)とあり、多くの島々の島陰をたどりつつ行く様を詠む。また、「百隈(ももくま)の道は来にしをまた更に八十島過ぎて別れか行かむ」(20-4349)とある。これは、瀬戸内海の島数の多さを表現するためだけの語ではない。ここでいう「隈」は、道の曲がり角を指し、例えば、同じ万葉集に「百足(ももた)らず八十隈坂に手向せば過ぎにし人にけだし逢はむかも」(3-427)とあるように、旅の安全を願って行路の神に「手向」を行う場であった。道の隈ごとに手向けをする習俗が旅の習俗としてその背景にあることと同様に、多くの島ごとに手向けをする習俗もあったと考えられる。
執筆者 城﨑陽子