國學院大學
國學院大學デジタルミュージアム

万葉神事語辞典


はじめに    ≫凡例    ≫項目執筆者一覧    ≫収録項目一覧

詳細表示 (Complete Article)

項目名 やしまのくに
表記 八島国
Title
Yashimanokuni
テキスト内容 日本の異名。「八」は日本では聖数にあたり、「多数」や「繁栄」の意味を持つ。この語の起こりについての記述が記紀の国生みの条に見えるが、どの島を「八島」に入れるかはテキストにより異なる。記では、淡路島、四国、隠岐島、九州、壱岐島、対馬、佐渡島、本州。紀の本書では本州、四国、九州、隠岐島、佐渡島、北陸道、大島、児島半島。紀の一書第一では、本州、淡路島、四国、九州、隠岐島、佐渡島、北陸道、児島半島で、いずれもイザナキ・イザナミが八つの島を最初に生んだことにより「大八島(洲)国」という呼び名が起こったとある。大は美称。記紀の「大八島(洲)国」は天皇の支配・統治する現実的な国土を指しての国名で、大宝令・養老令にも定着していた。常陸国風土記にも「大八洲(嶋)」の語が4例見える。一方万葉集には「八島国」「八島」(6-1050・6-1065)の用例がある。これらについて「多くの島から構成される国土」などの一般的な意で解する説もあるが、1050には「現世の生き神(明つ神)である天皇が治める地」である「八島」とあり、これは養老令の文言を踏まえたものである。また1065ではイザナキ・イザナミ二神の国作りを受け継いだ「八千矛神」(大国主の別名)が「八島国」の始原を規定する神として挙げられており、記の国生み・国作り神話を意識した表現と理解することができる。1050は「新しくできた久邇の都を賛美する歌」、1065は「敏馬の浦を通り過ぎたときに詠んだ歌」であり、ともに宮廷歌人田辺福麻呂により儀礼的な場で歌われたと考えられることをも考え合わせるに、「八島国」「八島」も一般的な意の表現にとどまらない、「大八島(洲)国」、すなわち天皇家支配を意識した語であるといえよう。 駒木敏「『古事記』国作り神の歌謡―八島国と高志国」『同志社国文学』62号。寺川真知夫「大八嶋国―その神話的世界としての役割―」『太田善麿先生追悼論文集 古事記・日本書紀論叢』(続群書類従完成会)。
執筆者 原田留美