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万葉神事語辞典


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項目名 みこのみこと
表記 皇子の尊・皇子の命
Title
Mikonomikoto
テキスト内容 皇太子やそれに準じる皇子に対する尊称。「みこと」は神や人を尊んでいうときに付けられる語で、これもその一つ。ただし用語例は多くはなく、天武天皇の皇子で立太子のことが伝えられる草壁について、紀に「草壁皇子尊」(天武2年条など)、万葉集の題詞に「日並皇子尊」(2-110、167)、『続日本紀』に「日並知皇子尊」(文武即位前紀など)、「日並知皇子命」(慶雲4年4月条など)とあり、万葉集の歌中にも「日雙斯の皇子の命」(1-49)、「我が大君皇子の命」(2-167)とうたわれる。また、同じ天武の皇子の高市についても、紀に「高市皇子命」(天武2年条)、万葉集に「高市皇子尊」(2-199題詞)とあるほか、その薨伝に「後(のちの)皇子尊」(持統10年7月条)とあり、「後皇子尊」の称は万葉集の或本の注記(2-169)や長屋王木簡にも見られる。こうした高市に対する「後皇子尊」の称は草壁に対してのものと考えられる。なお、万葉集では、大伴家持の安積(あさか)皇子挽歌(3-475、478、479)や巻13の皇子挽歌(3324)でも、薨去した皇子についてこの称が用いられている。これらも皇子を皇太子に準じる存在とみてのものであろう。この語について宮廷の思想を踏まえて説いたのは折口信夫で、折口は、「みこと」は本来ミコトモチ(御言持ち)の意であり、「天の下中で、最尊い『みこともち』をなさる御方」は天皇であり、天皇は「天つ神の命を伝達」するところから「顕貴の神聖を示す為の、『すめらみこともち』なる賛辞『すめらみこと』」の称で呼ばれることになったという。また、これと並んで「天つ神との中間に在して『みこともた』せ給ふ」存在として「中つすめらみこと」(中皇命)がおり、君と女君は本来対をなすが、時に君が欠けて女君だけになると、歴史上それは女帝となり、その折「天子の御代理を行われる皇子即、摂政」に当たる、「『皇子(みこ)』にして、『みこともち』なる方」として「みこのみこと」が求められ、「此方が自然、皇太子の様に見られて来る」と説く(「万葉集講義」)。折口信夫「万葉集講義」『全集9』(中央公論社)。折口信夫「万葉集研究」『全集1』(中央公論社)。 藤原茂樹「みこともち」『折口信夫事典』(大修館書店)。
執筆者 菊地義裕