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万葉神事語辞典


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項目名 まそかがみ
表記 まそ鏡
Title
Masokagami
テキスト内容 ①鏡の美称。②枕詞。万葉集には35例あるが、多くは②の用例である。表記としては、戯書を用いた「犬馬鏡」「喚犬追馬鏡」が5例、仮名書き例(「麻蘇鏡」、「末蘇鏡」)4例、さらに「清鏡」「白銅鏡」「銅鏡」が各1例をのぞくと、「真十鏡」がもっとも多く15例あり、ほかに「真素鏡」「真祖鏡」「真鏡」などの「真」をふくむ用例が8例ある。万葉集にある「ますみの鏡」(16-3885)という語が紀の神代紀の古訓や『新撰亀相記』にも見えることから、「まそかがみ」はその転訛と考える説もあるが、「まそかがみ」の例に集中することから、むしろ「ますみの鏡」は語源解釈の結果生まれた語形であろう。おそらく接頭語「まそ」は真+具の意で、足り備わったさま、十全なさまをあらわすのであろう。②枕詞の用例の大半は、鏡を見る・掛ける・磨ぐ・床のそばに置くなどの意で、「見る」「かく」「磨ぐ」「床の辺さらず」にかかる用例であるが、古代の鏡は「白銅鏡」や「銅鏡」とも記されているように金属製のものを磨ぎ澄ましたものであることから、その鏡が清く照り光ることをふまえて鏡を月にたとえて、「清き月夜」や「照り出る月」にかかる用例もある(8-1507、11-2462、11-2670、11-2811、17-3900など)。また鏡に映る影の意で「面影」にかかる用例(11-2634)もある。なお、「まそかがみ」を現物のものとしてうたう10例のなかには、「まそ鏡 手に取り持ちて 天つ神 仰ぎ乞ひ禱み」(5-904)という山上憶良の用例や「祝らが斎ふ三諸のまそ鏡」(12-2981)の用例があることから、「まそかがみ」は神を祭る儀礼にかかわるものと考える説もある。
執筆者 新谷秀夫