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万葉神事語辞典


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項目名 ひれ
表記 領巾
Title
Hire
テキスト内容 首に掛ける細長い薄布のこと。女子が首から肩へ掛け垂らし、その布は左右へ長く垂れる。『和名抄』に「背子、婦人表衣以錦之領巾 日本紀私記云、比礼 婦人項上飾也」とある。万葉集巻5に松浦左用姫が夫大伴狭手彦との別れ際に、高い山の嶺に登り「領巾」を手にとって振ったという。この左用姫が「領巾」を振った山を「領巾振の嶺」(佐賀県唐津市の東、虹の松原の南の鏡山)と呼ぶようになった。「領巾」は、女性の装身具の一つであるが、また呪力のあるものとされ、振れば念願がかなうとされた。左用姫は任那に使いする夫との別離を深く悲しみ、夫の魂を呼び寄せるために領巾を振ったのである。領巾には「天領巾」というものがあり、柿本人麻呂の「泣血哀慟歌」では「白栲の 天領巾隠り」(2-210、2-213)と、死んだ妻の姿を、真っ白い美しい「領巾」が包んだとあり、ここには天上の乙女、七夕の織女が身に付けていた領巾が見られる(8-1520、10-2041)。そうした領巾が「天領巾」であろう。他に「栲領巾」も見られ、の類の樹皮から採った白い繊維で作られた「領巾」のことである(3-285、9-1694、11-2823)。さらに「蜻蛉領巾」と言われる高級品があり、とんぼの羽のように透き通った極上の領巾である(13-3314)。そのような上等な「領巾」は、母の形見として娘に受け継がれていく物のようである。
執筆者 大堀英二