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万葉神事語辞典


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項目名 はふり
表記 祝・祝部
Title
Hafuri
テキスト内容 ①令制における神祇官の下級官職。「はふりべ」ともいう。②神職の一で、神社に属して神に仕える者。神主の下に位置して、祢宜とともに神主の指揮を受け、神事の執行に当たる。主な職掌は、毎年、祈年祭と月次祭とに際して神祇官に参集し、幣帛を受けること、所属する神社の社殿の管理を行うことであった。通常は、祝よりも祢宜が上位とされる。祝と祢宜との関係については、『類聚三代格』巻1に載せる868(貞観10)年の太政官符に「諸社祝ありて専ら祭事を主り、祢疑に至りては職はあれども務めなし」と見える。平安初期の頃、祝は直接神事を司っていたが、祢宜は形骸化していたということであろうか。同じ太政官符に、「諸国の小社、或いは祝を置きて祢宜なく、或いは祢宜・祝並び置く」とある。『令義解』には、神祇官の「祝部」に注して「謂、祭主の為に賛辞する者なり」とある。「はふり」の語源は、衣の袖を振ることに由来するとする谷川士清の説や、物を動揺させるという意味で鎮魂と関連づける折口信夫の説などがあるが、現在は、罪や穢れを「放(はふ)る」意と解釈する説が有力である。仲哀紀8年正月条に、神功皇后の乗った船が進まなかったので、倭国の菟田(うだ)の人、伊賀彦を祝(はふり)として、この浦の神をまつらせたところ、船が航行できたとある。また、履中紀5年9月の条には、淡路島で、この地に鎮座する伊奘諾神が祝を介して神託を伝えた記事が見える。これらの記事からは、祝は、神をまつり、神に仕え、また神と人との間の仲立をする存在であることが知られる。万葉集において祝をよんだ歌は、本文異同や異訓があるので数を確定しにくいが、5首ないし7首ある。それらの歌では、「三輪の祝」(4-712)、「住吉に斎く祝」(19-4243)など、具体的な神社名が明示されているものもあり、これらの祝たちは、特定の神社に属し、その神社で直接神祭りを行っている者として表現されていることが多い。たとえば、大神神社の祝は三輪の杉を大切に守護する者として歌われており、住吉の祝は遣唐使の航海が安全であることを予祝する託宣を伝えたことが歌われている。『古事類苑』神祇部二。
執筆者 北川和秀