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万葉神事語辞典


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項目名 との
表記 殿
Title
Tono
テキスト内容 ①貴人の住む邸宅から転じて②貴人そのものを指す例もある。紀には「味酒三輪の殿の朝門にも出でて行かな三輪の殿門を」(崇神天皇8年条)と、大田田根子(おほたたねこ)によって大神(おおみわ)を祭らせる際に神酒を献る歌に殿がみえる。これは文中「神宮」とされる敷設に等しく、三輪の神の住居を表現している。同じ紀の天孫降臨条には瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が木花開耶姫(このはなさくやひめ)を妻問う場面で「八尋殿」が描かれる「八尋」というその大きさもさることながら、大山祇神の娘がそこにこもっていることが、先の崇神紀の例とあわせ、殿の語がもつ本来的な意義を示していると考えられる。また、崇神紀には、天照大神を祀る場を「大殿」と呼んでいる。万葉集にも、「内の重の妙なる殿」(9-1740)と海神の宮を指す表現がみられ、「殿」は神の居所を指すことが本義であったことを示す。万葉集には、他に「稲搗けばかかる我が手を今夜もか殿の若子が取りて歎かむ」(14-3459)のように、神や天皇といった貴人を示す表現であったものが転じて主人を表わす語として用いられている例もある。
執筆者 城﨑陽子