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万葉神事語辞典


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項目名 とうげん
表記 桃源
Title
Togen
テキスト内容 中国における理想郷。中国の洞庭湖の西方、湖南省桃源県の山中にある場所がモデルになっているといわれる。俗世間から離れた場所であり、山水の中で仙境に遊んだり素朴な農耕をしたりできる世界である。また仙人がおり、桃源郷にいけば仙人同様になれる聖地ともされている。桃源郷の初出は陶淵明(365-427年)の著した散文『桃花源記』である。武陵の漁師が道に迷い山奥に迷い込むと桃の花が咲き誇る林があり、そこに住む村人は理想的な生活を送っていた。しかしその話を聞いた役人達が再度その場所を見つけ出そうとしても入り口さえも見つけられることができなかったという。この話は後の道教の思想やとりわけ神仙思想と結び付いていった。『懐風藻』に見える中臣人足の「遊吉野宮」に「此地即方丈 誰説桃源賓」とあるのは、吉野の地が山水智仁に基づく理想的な仙境として方丈や桃源に見立てたものである。また万葉集には、池主が大伴家持に上巳の時候の風光を「柳陌臨江縟袨服  桃源通海泛仙舟」という漢詩にして贈っている。特に「晩春の遊覧」の序(巻17)、これは友と集う宴は最も良い季節と景を兼ね備えた場であることを示すものであり、このような宴の場を桃源郷と重ね合わせたものである。
執筆者 鈴木道代