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万葉神事語辞典


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項目名 たまきはる
Title
Tamakiharu
テキスト内容 枕詞。語義・かかり方、未詳といわれる。タマが魂、キハルは刻む、または極まる意で「内(5-897)」「命(5-804、8-1455)」「幾代(17-4003)」「昔」にかかるという。「たまきはる宇智の大野に(1-4)」等とあり、これにかかって『全註釈』はその宇智の地に荒木神社があり、『新撰姓氏録』右京神別に、「玉祖宿禰、神牟須比命十三世孫建荒木命之後也」とあって、玉を作る人の本居地であるので、玉を切る宇智と続き、宮廷の意にウチにも冠し、また後にタマを霊に通わして、命、世にも冠するに至ったものか。真淵がタマの極まるとし、雅澄は手纏佩くであるとし、他にも説があるが、いずれもまだ定説とし難い。なお、『万葉集事典』(折口)は、「思ふに玉木萌るの意でもあらうか」という。「たまきはる」に冠してユニークかつ本質的な原始信仰という立場からアプローチしたのは、折口信夫であった。タマキハルは「魂来發」と漢字を当てるべきだといい、「魂が来触して、今までの状態を棄てゝたつ有様を表した語である」(旧全集第20巻「原始信仰」)とした。だから「たまきはる」を冠する18首中、「宇智の大野に」(1-4)、「うちの限り」(5-897)、「吾が山の上」(10-1912)、「世までと定め」(11-2398)、「幾代経にけむ」(17-4003)の5首を除く13首が「命」にかかるのである。つまり「たまきはる」の根底には「外来魂の来触」という原始信仰が絡んでいるのだという。その経過は、「田のとり入れの終わつた後で、その一年の間、田畑の稔りを手伝つてくれた神を招いて宴会をする。これが新嘗祭りの古い形で、同時に、秋祭りの固形であつたと思ふは、古くは此の秋まつりの引き続きとして、みたまのゆふまつりが行なはれたので、その間に、聖躬に外来魂が付着し奉る設けがあつた。かうして外来魂が付着して、ものいみの状態を脱する事をはるといつた」と。秋・冬・春はそのようして呪的に展開したのである。
執筆者 山田直巳