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万葉神事語辞典


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項目名 たかちほ
表記 高千穂
Title
Takachiho
テキスト内容 記・紀・風土記・万葉集に記載される日向国の地名。高く積み上げられた稲穂の意もあると考えられる。記紀の天孫降臨の物語では、天照大神の孫である瓊瓊杵尊が高天原から最初に降り立った場所として記される。記に「竺紫の日向の高千穂の久士布流多気に天降り坐しき」とあり、紀(巻2・天孫降臨章本書)には「日向の襲の高千穂峰に天降ります。」とある。また、『釈日本紀』が引用する日向国風土記(知鋪郷)にも「日向の高千穂の二上の峰に天降りましき。」とある。記紀神話における高千穂の比定地については、古くより宮崎県・鹿児島県の県境にある高千穂峰(霧島山)とする説と、宮崎県西臼杵郡高千穂町とする説がある。しかし、記紀の物語の高千穂については、神話世界における思想上の土地として理解したほうが穏当であろう。万葉集において高千穂は1例ほど確認できる。その例とは、大伴家持の詠んだ「族を喩す歌一首」(20-4465)で、「ひさかたの 天の門開き 高千穂の(多可知保乃) 岳に天降りし 皇祖の 神の御世より」という表現がある。また、この歌の左注には、出雲守大伴古慈斐宿禰が淡海真人三船の讒言によって任を解かれたことが記され、それを契機として家持が歌を詠んだことが記されている。先の歌表現は、記紀にみられるような天孫降臨の物語をふまえたものと考えられ、紀(巻2・天孫降臨章・第四の一書)には、瓊瓊杵尊が天の磐戸を引き開け、日向の襲の高千穂の峰に天降った時に、大伴氏の遠祖である天忍日命が、久米部の祖天槵津大久米を率いて天孫の先払いをしたことが記されている。家持は、大伴氏が神話の時代から活躍していることを示すことで、一族に対して、大伴氏の名が絶えることのないよう、軽挙妄動を慎むべきだ主張したものと考えられる。万葉集における高千穂とは、記紀の物語にみられるような神話的世界観を背後に持つ語として理解できる。
執筆者 大館真晴