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万葉神事語辞典


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項目名 そま
表記
Title
Soma
テキスト内容 植林して材木を切り出す山。「杣山」とも言う。造営・修理の用材に適する樹木の生育する山野は、権力者によって所有された。東大寺などの大寺も用材確保のために広大な杣を領有していた。杣人はそこで使役させられた民を指す。「宮材引く泉の杣に立つ民の休む時なく恋ひ渡るかも」(11-2645)は、宮殿を造る材木を切り出す民に休むことがないように長く恋していると詠み、「真木柱作る杣人いささめに仮廬のためと作りけめやも」(7-1355)は、杣人は仮小屋を作るためではなく立派な御殿を造るために材木を切り出すように、私の心も一時の出来心であなたを愛したのではないのだと詠むことから、杣は御殿を造る木材を民が休む暇なく切り出す山として捉えられる。家持が泉の杣である和束山を詠んだ「我が大君天知らさむと思はねばおほにそ見ける和束杣山」(3-476)では、安積皇子の墓とならなければ、ただ単に木を切り出すだけの山だと、和束山をいいかげんに見ていたという。ここには賤から聖へと杣山が捉え直されている。後世、伝教大師の歌として知られる「阿耨多羅三藐三菩提の仏達わが立つ杣に冥賀あらせ給へ」(『和漢朗詠集』602)は、「比叡山中堂建立の時」(『新古今集』1920詞書)に詠まれたという伝承のある歌であるが、粗末な杣山が聖なる山ともなり得ることを示している。
執筆者 荒木優也