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万葉神事語辞典


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項目名 すぎ
表記
Title
Sugi
テキスト内容 スギ科の常緑針葉樹。日本特産の植物。記において杉は「椙」「榲」の表記でみられる。須佐之男命の八俣大蛇退治の段に、八俣大蛇の姿は「其の身に籮と檜・椙とを生ひ」と表現されている。八俣大蛇の身体に生える杉には古代の自然としての杉林が表されているようである。また、垂仁天皇の段に本牟智和気御子が「尾張の相津に在る二俣榲を、二俣小舟に作り」て、遊ぶとあり、紀神代上にも素戔鳴尊が鬚髯から成った杉から舟を造るとある。記紀にみられる杉の木を用いて舟を造ったという記述からは、古くから杉材は身近なものとして生活に利用されてきたことがうかがえる。また顕宗天皇即位前紀には「石の上振の神榲」とみえる。この石上振の神杉は万葉集にも「石上布留の神杉」とみえ(10-1927、11-2417)、石上神社の神木であり有名であったらしい。石上布留の神杉はほかにも「石上布留の山なる杉群」(3-422)とよまれており、石上神社には杉が群生した杉林があったようである。万葉集中「杉」が詠まれた歌は11首あり、そのうちこの「石上布留の神杉」のように特定の地にまつられる杉はほかにも「みもろの三輪の神杉」(2-156)や、「三輪の祝(はふり)祝(はふり)が斎(いは)ふ杉」(4-712)、「三輪の祝が斎ふ杉原」(7-1403)、「神名備の三諸の山に斎ふ杉」(13-3228)とある。「みもろの三輪の神杉」は三輪山にまつられた杉であり、「三輪の祝」とは三輪山を神体とする大神神社の神官のことで、ここでは神杉が祝によって祀られていたことになる。万葉集ではこれら神木の杉が神聖で神々しく近寄りがたいことや「杉」と思いが「過ぎる」の同音にかけて、恋の歌によまれている。これは、神社の神木に恋の願を掛けたり、誓いをたてたりした習俗からの連想でもあろう。杉は古代において神の寄りつく木として信仰されていたことが知られる。
執筆者 渡邊明子
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石上の神杉