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万葉神事語辞典


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項目名 しつ
表記 倭文
Title
Shitsu
テキスト内容 日本固有の古い織物の名。舶来の織物を指す「あや(綾・文)」に対して、「倭文」の文字で表記する。栲や麻などの繊維を用いて乱れ模様を織り出したもの。古代においては上等の布とされ、「ちはやぶる 神の社に 照る鏡 倭文に取り添へ 乞ひ祷みて 我が待つ時に」(17-4011)のように神祭りの際に幣帛として用いられることもあった。のちには、古風で質素なものと見られた。また「倭文たまき 数にもあらぬ 命もて なにかここだく 我が恋ひ渡る」(4-672)のように、「倭文たまき」と枕詞で用いられており、倭文製の腕輪(手纏・たまき)は、玉や貴金属性のものに比べると価値が劣るため、「数にもあらぬ」および「賤し(卑し)」にかかる。もと「しつ」と清音であったが、常陸国風土記久慈郡で「静織里」で「静」の字が当てられており、「しづ」の形も古くからあったと考えられる。また紀には「倭文神〈此を斯図梨俄未(しづりがみ)と云ふ〉」と「倭文神」なる神名もみられる。中古以降は「しづ」が普通。常陸国風土記は「静織里」について、「上古之時、綾を織る機、未だ知る人在らず、時に此村初めて織る」と説明している。倭文は枕詞の他に、倭文布で飾りをした鞍の「倭文鞍」、倭文で作った幣帛の「倭文幣」、機織りをさす「倭文機」などの熟語が万葉集にみられる。
執筆者 渡辺卓