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万葉神事語辞典


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項目名 しこ
表記
Title
Shiko
テキスト内容 ①頑強の意。②みにくい。いまいましい。①は神代記に、伊邪那岐命が黄泉国において伊邪那美命の姿を見、驚いて逃げ帰る際、伊邪那美命が「豫母都志許売(よもつしこめ)」を遣わして伊邪那岐命を追わせたとある。また、大穴牟遅神が兄弟の八十神から逃れて根の堅州国を訪れたとき、麗しい神が来たと告げた須勢理毘売に対して、父神である須佐之男命が「此は葦原色許男(あしはらしこを)と謂ふぞ」と応えている。大穴牟遅神即ち大国主神の亦の名が葦原色許男であり、葦原中国の頑強な男という意に解される。神代紀第八段一書第六にも大国主神の亦の名として「葦原醜男」とある。葦原中国を支配する力に対して「しこ」という表現が用いられているとみられる。また、ヨモツシコメは伊邪那岐神にとって異界である黄泉国に属する存在であり、アシハラシコヲは根之堅州国に坐す須佐之男命にとって、やはり異界である葦原中国の神であることから、「しこ」にはこの世ならぬ強力さを表す意があるとも考えられる。②は万葉集に、恋の苦しみを忘れさせてくれるはずの忘れ草の効き目のないことを罵った「醜の醜草(鬼乃志許草)」(4-727、12-3062)や、鳴き声で橘の花を散らせてしまう「醜霍公鳥(しこほととぎす)」(8-1507)、逆に来て鳴いて欲しいときに来てくれない「醜霍公鳥」(10-1951)のほか、「小屋の醜屋」・「醜の醜手(鬼乃四忌手)」(13-3270)「媿士(しこを)」(16-3821)「醜つ翁」(17-4011)など、みにくい或いはいまいましい対象を罵倒する表現として見られる。また、「醜の丈夫(鬼乃益卜雄)」(2-117)「醜の御楯」(20-4373)など、自己を卑下して用いる場合も認められる。この世ならぬ頑強さの表現であった「しこ」が、それに付随する恐ろしさなどから、みにくさやいまいましさなどの意へと転じたものか。
執筆者 舟木勇治