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万葉神事語辞典


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項目名 さくら
表記
Title
Sakura
テキスト内容 バラ科の落葉高木。現在の日本列島ではヤマザクラ・カスミザクラ・オオシマザクラなどの自然種を基本に、変種や園芸品種をあわせて200種以上が野生・栽培されているといわれる。これらの総称。花色は白色から濃紅色までさまざまで、古代はヤマザクラなどの白色の花が主という。日本文化において古くから親しまれた春の代表的な花であり、平安時代以降では「花」といえば「桜」を意味する。なかでも散る様が愛でられ、人の心の移ろいやすさや世の無常の象徴ともされた。しかし、奈良時代以前では「花」とだけある例をただちに「桜」と見ることはできない。万葉集に詠まれた桜は「桜花」「山桜花」などを含めて40例を超えるものの、歌数としては「萩」「梅」などに比べてずいぶん少なく、なかにはすでに散る桜を愛で惜しむ例(8-1425)もみえるが、後世のように無常の象徴という性格までは見出し難い。また、記紀神話におけるコノハナサクヤビメのコノハナを桜に限定する説もある。コノハナサクヤビメの挿話は天孫降臨神話において重要な要素のひとつであり、天皇および人間一般の死の起源を説くいわゆるバナナ型神話である。姉のイワナガヒメの名が象徴する磐のような永続性と対比されており、コノハナを桜とみるならば、繁栄や生命の象徴として意識されていたことが窺える。「さくら」の語源は古来さまざまにいわれており、コノハナサクヤビメのサクヤが音転化したという説や、穀霊である「田神(さがみ)」の「さ」と神のよりつく所を意味する「座(くら)」の結合語であるという説や、「咲く」に名詞化する接尾語「ら」が付いたという説など、多数がある。民俗学的には、花の付き具合で豊作か否かを占ったことや農耕の時期を知らせて咲くという意識が指摘されてもおり、語源を穀霊とみるのもこれに基づいている。『延喜式』には桜花の散る陰暦3月に鎮花祭を行うことが定められており、桜を指標として疫神を祀り悪病をはらった。
執筆者 井上さやか
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