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万葉神事語辞典


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項目名 ことよす
表記 言寄す
Title
Kotoyosu
テキスト内容 ①ことばによって味方、協力する。はからう。②噂を立てる。言い立てる。「言寄す」の「寄す」は下二段動詞であり、その用例は男女の仲についてのものにかたよる。この「寄す」と言葉をあらわす「言」が結びついた「言寄す」は本来、言葉によって男と女を「寄す(=結びつける)」ことをあらわしたことばであったが、そこから派生して、男女ふたりがすでに「寄す」状態にあると第三者が噂している意(②)でも使用されるようになったようで、万葉集には「君が手取らば言寄せむかも」(7-1109)や「里人の言寄せ妻を」(11-2562)など見える。この「言寄す」の本来の用法としては、部下である尾張少咋を大伴家持が教え喩した歌(19-4106~4109)のなかで「とこしへに かくしもあらめや 天地の 神言寄せて 春花の 盛りもあらむと」(19-4106)と使われている用例と、三香原行幸時に笠金村が詠んだ「娘子を得て作る歌」(4-546~548)のなかで「天地の 神言寄せて しきたへの 衣手交へて 自妻と 頼める今夜」(4-546)と使われている用例がある。いずれも「天地の神」が「言寄す」という形であらわれているが、この2首はいずれも、神がお言葉をもってふたりの縁を取り持ってくださったとうたうことで、ふたりの結びつきが聖なるものであることをあらわそうとしているのであろう。したがって、「言挙げ」や「言霊」といった、言葉に実態を導く呪力があると考えていたことから発生した表現と同様に、男女の仲が「天地の神」の「言」によってうまくいくことを願う気持ちの反映を「言寄す」に見てとるべきであろう。
執筆者 新谷秀夫