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万葉神事語辞典


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項目名 ことあげ
表記 言挙げ
Title
Kotoage
テキスト内容 神の意志に背いて特別に取り立てて述べること。言挙げに誤りがあると、命を失うことにもなるので、タブーとして慎まれていた。万葉集には「千万の軍なりとも言挙げせず取りて来ぬべき男とぞ思ふ」(6-972)のように、千万の敵だとしても言挙げをせずに退治するのだという。また「秋津島 大和の国は 神からと 言挙げせぬ国 然れども 我は言挙げす」(13-3250)のように、我が国は言挙げをしない国だが、恋の苦しさのためにその思いを特別に述べるのだという。同じ歌に「葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国 然れども 言挙げぞ我がする」(13-3253)ともある。「言挙げ」というのは、個人が個人の意志を明白にする態度であるに違いなく、それを慎むというのは、それが神の態度を越えるからであろう。言挙げをするのは、神のみに許された行為なのである。神の意志を受けて行動するのが古代日本人の態度であり、言挙げは神の意志を越えたり、神の意志に背くことになるのである。記でヤマトタケルの命がイブキ山の神の出現に対して、それを神の使いだと見誤り素手でやっつけてやろうと言挙げをしたことにより命を落とす結果となった。個人の自己主張は慎むべきであり、個人の主張は神により承認された言葉において可能であったのである。そうした神の意志は、個人を越えて国のあり方におよぶものであるゆえに、言挙げは慎むべきものであったのである。
執筆者 辰巳正明