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万葉神事語辞典


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項目名 こじまのかみ
表記 小島の神
Title
Kojimanokami
テキスト内容 海中の小島に祭った神。海の神とも考えられる。小島の神の用例は万葉集中に「雲隠る小島の神のかしこけば目こそは隔て心隔てや」(7-1310)の1例のみである。歌自体の解釈としては、譬喩歌であるので「雲隠る小島の神」は2人の関係を許さない親を譬えたものと考えられている。しかし「かしこい」存在として「こじまのかみ」が挙げられるのには、それなりの理由があろう。当該歌は「寄海」の歌の中に入れられている。つまり、それは小島が海上のものであることを指し示していると考えられる。そして「雲隠る」は枕詞で神に続くが、それと共に小島そのものの状態も表現しており、海上の雲に隠された小島という神秘的な情景が想起できる。この小島の神は、海を支配する神であった。万葉集中に、「海原の 辺にも奥にも 神づまり 領き坐す 諸の 大御神たち 船舳に 導き申し」(5-894)や「奥つ国領く君が塗屋形黄塗の屋形神が門渡る」(16-3888)といった歌が見られるが、これらの歌は、海上を神の支配する領域と歌っている。特に後者の歌は、「怕物歌」の1首であり、人知の及ばない海に対する畏怖の念の強さを感じさせる。よって、海上を交通する船は、これらの神に幣を捧げて航海の安全を祈ったのである。そのような、海上の神に対する信仰、畏怖の念があったからこそ、譬喩の表現としての面白みがあったのであろう。
執筆者 前川晴美