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万葉神事語辞典


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項目名 ここのたりのをみな
表記 九箇の女子
Title
Kokonotarinowomina / Kokonotarinoomina
テキスト内容 16-3791~3802の竹取翁歌の漢文の序文にある老翁が春3月の丘に登り、遠望したところ九箇の女子が羮を煮ているところに出会う。女子達は冗談のつもりで翁に燭火を吹くようにと呼び寄せるが、翁は神仙との出会いに有頂天になり女子達の座に入ってゆく。そこで女子達は翁の場違いな行動を誹り嘲笑う。翁は場違いな雰囲気を感じ、神仙の女子達に謝罪のためとして人生の歌を詠い諭す。この九箇の女子については4つの考え方が示されている。①仙薬を煮る仙女のことであり、神仙思想の流行していた当時の宮廷人の志向性を反映した女性像である。若菜は仙女の作った不老不死の仙薬と考えられる。②柳田国男はこの女子達が天人女房の物語を意識した人物設定と考えている。③折口信夫は神女の資格を得るために山に籠もっている女子であるとしている。『口訳万葉集』では天女と解している。④土橋寛は山遊びの行事の翁と女子達の歌掛けと解している。『代匠記』や『古義』にも①の説に添った仙女と解する傾向がある。その論拠として万葉集に見られる仙柘枝の歌(3-385~87)や松浦河の歌(5-853~70)や浦嶋子の歌(9-1740~41)等を挙げて、人と仙女とが関わる歌(贈答歌)と物語と序文が示されている。『代匠記』や『古義』の指摘以外にも万葉集には文芸的志向性として仙女と人間の男との出会いの場面を想定した作品の中での贈答歌がある。春の山の遊びの場面を当時流行していた不老不死の薬を作る仙女との出会いに準えているものと思われる。そのように考えると仙女達の永遠の若さと美しさを鼻に掛けた傲慢さ(道教的不老不死を希求する永遠性)を全面に出すことによって、これに対して仏教的無常観を詠う翁を対照的に描いてこれを諭すという趣向で纏めた巻16の特殊な歌といえるのではないかと思われる。この九箇の女子達は、美女の傲慢性と無常観を対比して、一瞬の若さに奢る美女の哀れさと言う解釈の始まりではないだろうか。後の竹取物語のかぐや姫や小野小町の物語の美女の性格設定に繋がる可能性がある。
執筆者 吉田比呂子