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万葉神事語辞典


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項目名 くろま
表記 黒馬
Title
Kuroma
テキスト内容 闇夜に紛れ恋人のもとへ通う男の乗る黒色の馬。大伴郎女が藤原大夫に答えた歌に「ぬばたまの 黒馬来る夜は」(4-525)とある。佐保河の小石を踏みわたって闇の中をあなたの黒馬が来る夜は、年に一度でもあってほしいという。その着想に七夕伝説との関連を指摘する説もある。類歌(13-3313)ではこの黒馬に乗るのは前歌との関係から天皇であることが知られる。この歌群(3310~3314)は記の八千矛の神の歌謡と原形が同じとされ、神事歌謡がやがて天皇を主人公とした歌物語へと発展していったと思われる。また、里人に告げられた話として歌われた「神なびの  この山辺から  ぬばたまの  黒馬に乗りて」(13-3303)では恋する夫が神の山から川の瀬を渡ることで、手の届かない所へいってしまうという。相聞に分類されているが、人が告げるという点から本来は死者を弔う歌である挽歌とする指摘もある。その場合、夫の乗る黒馬は死へと旅立つ際に乗る馬となる。闇夜に紛れ恋人のもとへ通うための馬として歌われるが、その背後には元来、神もしくはそれに近い存在が乗るものとの認識があったと思われる。
執筆者 落合孝彰