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万葉神事語辞典


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項目名 くすしきかめ
表記 奇しき亀
Title
Kusushikikame
テキスト内容 「奇し」はふしぎな様、霊妙な様をいう。また、亀そのものも、古代中国では神霊の宿る動物として卜占に用いられており、わが国でも亀卜の具とされた。奇しき亀とはまさに霊妙な、神意を負った亀として万葉集に登場する(1-50)。その神意は、「図」として亀の甲羅に記されるが、これは『尚書正義』孔安国伝に「神亀負文而出」とある「文」と同様、天子が天命を受ける兆であったと考えられる。また、奈良県高市郡明日香村岡の亀形石像物は、斉明天皇が造営したとされる「両槻宮」の関連施設とも推定されており、その用途については未だ解明されてはいないが、何らかの祭祀に関わった用途があったとの見方が有力である。このことを考え合わせると、亀という形状に何らかの意味を見いださざるを得ない。『続日本紀』には、723(養老7)年9月に、白亀が献上され、「図諜勘検(ずちょうかむが)へしむる」によって、これを「天地の霊貺(れいきょう)、国家の大瑞」とし、聖武の即位にあわせて改元したことが記されている。また、同じく770(神護景雲4)年の8月に、肥後国から2匹の白亀が献上され、これも「大瑞」とされ、光仁天皇の即位とあわせて改元したことが記されていることは、讖緯祥瑞思想に基づく発想であると考えられる。藤原役民の歌に詠われる「奇しき亀」(1-50)は紀にその記述をみることができないが、藤原宮造営という国家事業に伴って出現した祥瑞を詠み込むことで、天命のあることを示し、祝意を込めたのである。東野治之「飛鳥奈良朝の祥瑞災異思想」『日本歴史』259。関晃「日本古代の国家と社会」『関晃著作集』4(吉川弘文館)。
執筆者 城﨑陽子