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万葉神事語辞典


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項目名 きゅうと
項目名(旧かな) きうと
表記 旧堵
Title
Kyuto
テキスト内容 万葉集の高市古人(高市黒人のことか)の歌(1-32~33)の題詞に見える語。従来の注釈書・テキスト類は「ふるきみやこ」と訓んで、小島憲之が「万葉人は高垣を通じて、都の宮殿や都の城壁などを思ひ、これを音通の『都』の意に用ゐたかも知れない」と指摘したのに代表されるように、高い垣根・垣の内をあらわす「堵」と、人の集まる邑の意である「都」と通用させたものであると考えてきた。しかし最近、『新大系』が「きうと」と音読して「築地の塀が崩れ落ちたまま残っていたのであろう」と解釈した。なお『和歌大系』は「旧堵」のまま記して訓読していないが、「『堵』は『都』と通用。旧都に同じ」と従来の説を踏襲している。「堵」字は、この用例以外に万葉集では知造難波宮事である藤原宇合が詠んだ歌(3-312)の題詞の「難波堵」と、「新田部親王に献る歌」(16-3835)の左注の「堵裏」の2例を見る。いずれも『新大系』を除いて「都」と通用されていると考えられてきた。しかし、万葉集にみえる「堵」をいずれも「みやこ」と訓まなかった『新大系』も、口語訳では「難波の宮の築地の塀」・「都の域内」としていることから、「堵」に「都」の意をくみ取っていることに変わりないようである。たしかに「旧堵」をうたった高市古人の歌には「古き京を 見れば悲しき」(1-32)や「荒れたる京 見れば悲しも」(1-33)という表現が見え、さらに高市黒人の「近江旧都の歌」(3-305)もあることから、「堵」を「都」と通用したと考えるのが無難かもしれない。しかし、関隆司が指摘するように、「都」の意で「堵」を用いた用例は漢籍にもないことは注目すべきである。高市古人の歌表現から考えると、古人が見ている光景はたんに「古き京」であり「荒れたる京」にすぎない。題詞の「旧堵」は、この歌の作歌事情をよく知る者が記したのであろうが、それが作者である古人なのか、巻1編纂者なのかは簡単に決することはできない。いずれにしろ古人が見た光景を、『新大系』が指摘する「築地の塀が崩れ落ちたまま残っていた」ことをあらわす「旧堵」によってあらわしたと考えられる。小島憲之「万葉用字考証実例(一)―原本系『玉篇』との関聯に於て―」『萬葉集研究 第二集』(笠間書院)。関隆司「『うらさびて荒れたる都』考」『駒澤國文』41号。
執筆者 新谷秀夫
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