國學院大學
國學院大學デジタルミュージアム

万葉神事語辞典


はじめに    ≫凡例    ≫項目執筆者一覧    ≫収録項目一覧

詳細表示 (Complete Article)

項目名 きぼく
表記 亀卜
Title
Kiboku
テキスト内容 亀の甲羅を焼いて神の心を知る占い。万葉集には山上憶良が病となり、その原因を知るべく「亀卜の門、巫祝の室」(巻5「沈痾自哀文」)を訪れたという。また訪れのない男を待つ女が「ちはやぶる 神にもな負ほせ 占部すゑ 亀もな焼きそ」(16-3811)というように、占部(占いを専門とする公的集団)が亀を焼いて占う方法が見える。万葉集には石占・夕占・足占・水占・八占などの卜占が見られ、これらは誰でも可能な方法に違いないが、少し専門的になると「武蔵野に占へ象焼きまさでにも告らぬ君が名占に出にけり」(13-3374)のように、隠していたあの人の名が、占いにより出てしまったと嘆くのである。この占いは鹿の肩あるいは亀甲を焼いて占う方法であったと思われ、専門家によるものと思われる。古代の令制下では職員の神祇官に卜部が20人属している。記によれば「卜者焼亀甲也(占いは亀の甲羅を焼くのである)」(『養老令』)とあり、「是卜部執業(卜部が占いの任務を執行する)」(『義解』)という。諸国の神社にも卜部が属していた。そうした卜部の専門家に依頼し、亀甲や鹿肩を焼いて占ってもらったのであろう。それが恋歌へと展開しているのである。亀の甲羅を焼いて卜う方法は、古く中国に発生し、殷の時代には漢字の生まれる状況を作った。なお、古代日本では鹿の骨を用いたことが知られ、天の岩屋戸に隠れた天照る大神を引き出すために天の香具山の真男鹿の骨を抜いて占いをした(記)という。こうした占いは、神の心を知るための最も有効な方法であった。
執筆者 辰巳正明