國學院大學
國學院大學デジタルミュージアム

万葉神事語辞典


はじめに    ≫凡例    ≫項目執筆者一覧    ≫収録項目一覧

詳細表示 (Complete Article)

項目名 きぬがさ
表記 蓋・盖
Title
Kinugasa
テキスト内容 ①天皇、皇子、公卿など貴人の出御に際して、後ろからさしかける絹張りで柄の長い傘。唐風の儀装で、儀制令に皇太子以下高官が朝儀に用いる蓋の布の色、垂らす総(ふさ)などの様式について規定がある。『和名抄』に「華盖《和名岐沼加散》黄帝征蚩尤時当帝頭上有五色雲因其形所造也」と、古代中国の黄帝の頭上に現れた瑞雲を形象化したものとの説明を付す。『梁書』武帝紀上に「時所住齋常有五色回転状若蟠竜其上紫気騰起形如繖蓋望者莫不異」とあって、盤竜のように輪を成す五色の雲の上の紫気を繖蓋(きぬがさ)のようだと譬えている。常陸国風土記行方郡に、建借間の命の戦闘の様子を「雲の蓋を飛(ひるが)へし」と修飾し、同久慈郡に土地賛めの言葉が「青葉は自づから景(ひかげ)を蔭(かく)す蓋を飄(ひるがへ)し」とある。これら「きぬがさ」は、表現上での高い象徴性を物語っているが、この象徴性は「かさ」に対する古代信仰を基層に置いていると考えられる。沖縄では辺土(へど)の岬の遥拝所に神来臨の場として涼傘(りゃんさん)を立てた。蓑笠は神に扮する物忌みの衣であり、斉明天皇の葬儀の様子を山上から眺めていた鬼は大笠をかぶっていた(紀)など、傘の下を聖所あるいは異次元として観想している。「きぬがさ」は、万葉集に2例ある。柿本人麻呂の長皇子遊猟従駕歌の反歌「ひさかたの 天行く月を 網に刺し 我が大君は 蓋にせり」(3-240)は、月を網で捕らえて蓋にしたと、皇子を天つ神の御子と称えて荘厳ないでたちを歌う。僧恵行は「我が背子が 捧げて持てる ほほがしは(注:朴の木) あたかも似るか 青き蓋」(19-4204)と、大伴家持の高貴さを賛美した。両首共「きぬがさ」は人物の理想像の象徴として機能している。②御神体、仏像の渡御に際してさしかける傘。それは仏像の天蓋として装飾化され、折口信夫「遠来の神」『全集15』(中央公論社)。折口信夫「小栗外伝」『全集2』(中央公論社)。
執筆者 升田淑子