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万葉神事語辞典


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項目名 きつね
表記
Title
Kitsune
テキスト内容 食肉目、犬科の哺乳類動物。『華厳音義私記』に「狐狼 上、倭言岐都禰、又狐諼獣鬼所乗、有三徳狐疑不定也」とあり、『和名抄』に「狐 岐豆禰、獣名、射干也、関中呼為野干語訛也、孫愐曰、狐能為妖恠至百歳化為女者也」とある。狐は、人を騙す獣として考えられており、さらに百歳に至った妖怪の狐は、女に化けるのだという。『霊異記』上巻第2縁に、狐を妻として娶り子を生ませた話がある。欽明天皇の御世に、美濃の国大野の郡の人が、妻を求めて出かけた所、狐が化けた女に出会い、結婚し懐妊して一人の子をもうけた。しかし、ある時、飼い犬に襲われ、女は元の「野干(きつね)」の姿を現してしまった。家長は、それを見て、お前とは子を成した間柄故、「毎に来りて相寐よ」と言った。そのため夫の言葉を覚えており「来(きた)り寐(ね)キ」ということから「支都禰(きつね)」と言うのだという。また、その子の名を「岐都禰(きつね)」と名づけ、姓を狐の直とつけた。美濃の国の「狐の直」という姓の起こりを語る縁である。人を騙す獣として狐は描かれており、狐の霊威を認めていたことが窺える。万葉集の長忌寸意吉麻呂歌に「狐に浴むさむ」(16-3824)と見え、様々なものを詠み込んで歌にするという洒落の歌であるが、その中に「狐の声」もあげられている。真夜中まで行われていた宴であり、そこで聞こえた狐の声に宴席の人たちは何らかの恐れを感じたのであろう。
執筆者 大堀英二