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万葉神事語辞典


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項目名 かわ
項目名(旧かな) かは
表記
Title
Kawa
テキスト内容 万葉集の川は次のように分類出来る。①自然地形。②比喩(ア、細長い形態が喚起する長久性。イ、絶えず続く水の流れが喚起する永遠性、継続性。ウ、流れの淀むことなき速やかさ。)③寓意(越えてはならない男女の仲。)④清々(すがすが)しい雰囲気(清らかで澄み切った川の水の流れが生み出す清々しさ。)⑤障害(両岸の通交を妨げる障害たる川の流れ。)⑥交通路(ア、船での両岸の往来。イ、徒歩での浅瀬の渡河。ウ、船による川上・川下の往来。エ、木材等物資運搬の水路。)⑦船遊びの場 ⑧物が流れる場。⑨禊ぎの場。⑩生産の場(魚などの川の幸)。神事に関わるものは、以下の通りである。②のイとしては、川の流れの永続性から吉野宮の永遠性を言祝ぐ例(1-36)がある。川は永遠の象徴でもあった。④は山部赤人が吉野宮を讃えた歌に頻出する。(3-315)で吉野宮が川の本性でこうも清らかだと詠まれる時、川の清浄さが吉野宮の神聖性を保証する。清らかな川のある吉野宮一帯が聖なる理想郷となるのである。⑤⑥は、巻10の七夕歌を中心に、彦星が織女に逢いに行く場面に頻出する。⑤は通常、天の川で妨げられている通交が、七夕の日のみ⑥のア・イのように、船や徒歩で天の川を越えることが可能となる。天の川は障害と通路の二面性を持ち、七月七日のみ二星の通路となる点において、七・七忌に此岸と彼岸を結び死者の通路となる三途の川に対応する霊的存在と言える。⑨は(4-626)等にみられ、川の水の浄化力によって罪汚れを祓い、清浄な心身に立ち戻ることを意味するものである。水に復活生成の力があるとするのは、あらゆる宗教に見出されるが、特に川は水が流れ去るという特色を持つので、静止した水辺より禊ぎに相応しい場なのであろう。⑩は(1-38)等に大御食としての川魚の捕獲が見出される。川の幸を司る川の神さえもが天皇に仕えることを詠むことで神々の頂点に立つ天皇が称揚されている。
執筆者 勝俣隆
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明日香川の石橋

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明日香川