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万葉神事語辞典


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項目名 かめ
表記
Title
Kame
テキスト内容 ①祥瑞としての亀 ②占いのための亀。亀卜(きぼく)。万葉集に出てくる亀は①と②である。①は(1-50)の「藤原の宮の役民が作る歌」に見られ、我が国が常世になるというめでたい模様を甲羅に負った霊亀が、藤原宮造営を祝って出現したとある。甲羅に神秘な文様を負った亀の例は、正倉院の青斑石鼈合子(せいはんせきべつごうす)の背甲に北斗七星図がある。三宅久雄氏はこの合子を不老不死の仙薬を容れた容器とされた。『続日本紀』でも七星を背に負った亀が出現したために霊亀と改元したとする。神亀と宝亀への改元も大瑞である白亀の出現に拠る。ただ藤原宮造営の際は文献上霊亀出現の記事はない。亀は古来、中国で霊獣とされ、麒麟・鳳凰・竜と合せ四霊とされ瑞祥として尊ばれた。長寿の亀は不老不死の象徴でもあった。2000(平成12)年発見された飛鳥亀形石も不老長寿との関係が推測されている。亀は大地を支える神として宇宙論的にも尊重され、亀趺(きふ)として柱や碑文等の台座ともされた。(1-50)で注目されるのは、「我が国は 常世にならむ」という一節である。紀や風土記の浦島伝説の如く、古代日本では「常世」と「蓬莱」は同一視されていた。その蓬莱は、亀と密接な関係を持つ理想郷であり、『列子』では、蓬莱等五山を亀が支え、丹後国風土記逸文「浦島子」では蓬山に住む五色亀として亀比売(かめびめ)が登場する。この五色亀は道教的神仙思想と関わるが、一緒に登場する昴星(すばる)や畢星(あめふり)との関係や、中国で参宿(しんしゅく)・嘴宿(ししゅく)を海亀とみなしたことなどから、五色の美しい星座である参宿・嘴宿(オリオン座)を亀に見立てたものと推測される。常世と亀は密接不可分なのである。②は(16-3811)の「夫君に恋ふる歌一首」に、占い師に亀の甲羅を焼いて占いなどさせるなとある。亀甲を焼いてひびで占う亀卜は中国古来の占いで、日本でも亀卜に関わる考古遺跡は壱岐・対馬から東北に到る海岸地帯を中心に散在している。亀卜の内容は国家の大事(戦争・農業・祭祀・天文・気象)から、個人の疾病の原因・治療法に至るまで様々であった。当該歌は病気の治療法に関する占いだろう。なお、古事記では神武東征の際に槁根津日子(さをねつひこ)という国つ神の乗物として亀が登場し、交通手段である点が万葉集とは異なる。三宅久雄「青斑石鼈合子と仙薬七星散」『正倉院紀要』23。千田稔・宇野隆夫『亀の古代学』(東方出版)。勝俣隆「浦島伝説の淵源」『国語と国文学』73巻10号。
執筆者 勝俣隆