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万葉神事語辞典


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項目名 かむなづき
表記 十月
Title
Kamunazuki
テキスト内容 陰暦冬10月の称。万葉に仮名書き例はなく、すべて「十月」と表記されている。「かむなづき」という名の由来には諸説がある。『奥義抄』には、10月は出雲に神々が集まってしまい、神がいなくなるので「神無月」といったと記されている。「神無月」の表記と関わるこういった「神無し月」の意とする解が流通しているが、これは諸社に祭がないための月の名とする『徒然草』の説(202段)や、雷神も10月になれば声を収めるので「なる神のなき月」の意とする『代匠記』の説とともに根拠が薄弱である。その年の新穀を神に捧げるための「神嘗月」とする説(『倭訓栞』など)や、新穀で酒を造る「醸成(かむなし)月」とする説(『古義』など)もあるが、「かむなづき」が収穫に関わる秋の9月などでなく冬の10月であることに不審を残す。また折口信夫は、巻貝の「みな」から発した「みなつき」(水無月)があり、それに対して1年を2つに分けて年末に近い方を「上のみなつき」といったことから「かみなつき」の語が生まれたという説をとなえ、また神に供えるための山獣の頭である「なつき」から「かみなつき」が生まれたという説も出している(「霜及び霜月」)が、確証はない。おそらく、「かむなづき」は、神+な(の)+月で、神祭りと関わる語ではなかったかと思われるが、古代日本人の季節観念と外来の暦法との齟齬もどこかで生じたのではないだろうか。ところで、万葉の「かむなづき」の歌は、1590、3213、4259など「時雨」と関わっている(2263は本文が「九月のしぐれの雨」で、異伝が「十月のしぐれの雨」)。古今集以後、時雨は冬のものだが、万葉では秋のものとされることが多く、しかしその中で「十月(かむなづき)」の時雨がいわれているのは注意されよう。折口信夫は、「神無月の名に、神がゐないと感じたのは、九月の末に、神を送つて了つたと言ふ信仰があるからである」(年中行事)と述べていることともあわせて、この語の原義とその展開を考えてみるべきだろう。
執筆者 内藤明