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万葉神事語辞典


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項目名 かむづまる
表記 神留・神積
Title
Kamuzumaru
テキスト内容 万葉集では神豆麻利。カムは神としての行動を示す接頭語で、ツマルは留まる、鎮るの意。記紀風土記にはみえず、万葉集では山上憶良が渡唐を控えた遣唐使、丹治比真人広成に謹上した好去好来歌(5-894)に1例のみ。その他には、祝詞(祈年祭、六月晦大祓など)に「高天の原に神留ります」、宣命(第14詔、天平勝宝7月2日)に「高天の原に神積まります」とある。かむづまるの語義については「神集なり」と神が集まるとする考えがあるが、本居宣長によって、神留は皇孫が降臨したことに対して降臨せずにその場に留まり鎮っていること。即ち神が留まることとされ(「大祓詞後釈」下、六月晦大祓の条)、現在大方が従っている。好去好来歌では「海原の辺にも沖にも神留まりうしはきいます」と、神々が留まり鎮座しているのは海原の岸や沖である。その神々は、「諸の大御神たち」であり、住吉大神とする考えがある。当時の遣唐使船はそれぞれの舳先に航海の安全を守る住吉大神を祭る社殿が設けられ、大使の船に乗った主神がそれに奉斎していたことが知られる。憶良の詠う「諸の大御神たち」は、航海の往路では船のへさきにいて先導し、復路では船のへさきに手を掛けて先導する。船と関わって航海の無事を祈る対象としては、後世、船の守護神として海の民の間でひろく信仰される船霊(ふなだま)(船神様、オフナサマなどと呼ぶ地方もある)の初出とされる『続日本紀』淳仁条に「幸いに船霊に頼りて平安に国に到らば」がある。高麗から帰朝する船が大雨にあったときに祈願した言葉である。好去好来歌では、遣唐使の務めを加護するのは「天地の大御神たち大和の大国御」魂である。その神々は天を自由に飛び翔り見わたして遣唐使を加護するが、「神留りうしはきいます諸の大御神」たちは、海に鎮座し、領有する海での航海においてその力を発揮する。本居宣長「大祓詞後釈」『全集2』(吉川弘文館)
執筆者 同前美希