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万葉神事語辞典


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項目名 かみがと
表記 神が門
Title
Kamigato
テキスト内容 神霊のある恐ろしい海峡。神の司る海峡。「門」は、河口や海の、両岸が迫って門のようになっている地形をいう。川門、金門、天の門、水門などの例がある。万葉集の「ろしき物の歌三首」中の1首に、「沖つ国うしはく君が塗り屋形丹塗りの屋形神が門渡る」(16-3888)というのがある。この歌は「沖の国を治める君の屋形船、丹塗りの船が、海神のいます海峡を渡る」という意味だが、「沖つ国」が海の果ての他界、死霊の赴く地で、そこを治める君の船が今まさに神の司る海峡を渡るさまを詠じたもので、非現実的な怕ろしい光景を歌っている。「門」は地形をあらわすとともに境界を示し、ここではこの世からあの世の境界としての意味を持つ。「神が門」の原文は「神之門」で、「神の門」とよむこともできる。近年では、『釈注』、『新大系』などが「神の門」と詠んでいる。その理由を『釈注』では「『うしはく君』の性質上、距離を置くノと訓むを可とする」と述べている。「が」より「の」の方が敬意を含んだ表現とされる。この「怕ろしき物の歌三首」は、3首目(3389)に難訓もありどのような性格のものか明確でないが、「天上の野の鶉、冥界の船、人魂の三つの怪異を想像して」(『新大系』)、歌ったものといえよう。万葉集中、「神が門」はこの1例だが、巻7「羈旅にして作る」の「潮満たば いかにせむとか 海神(わたつみ)の 神が手渡る 海人娘子(あまをとめ)ども」(7-1216)の「神が手」は類似する語である。「手」は渡リデ・長テなど道を表すから、神のいる海峡をいうのであろう。出雲国風土記・神門(かむど)郡に、神門と名付けた理由として、神門の臣伊加曽然(いかそね)の時に、神門を献納し神門の臣らがずっとそこに住んでいるから神門といった、という記事がみえる。献納した「神門」とは神領への入口、鳥居のことをいっている。「門」は、神の世界と人の世界を分かつ境界としての意味を持つ。多田一臣「『怕しき物の歌』」『国語と国文学』8巻12号。
執筆者 小野寺靜子