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万葉神事語辞典


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項目名 かつら
表記 桂・楓
Title
Katsura
テキスト内容 山地に自生するかつら科の落葉大高木。早春に淡紅色の小花をつける。但し、中国では「桂」を木犀や肉桂などモクセイ属の植物名としており、日本のそれとは異なる。万葉集では「楓」字を用いて4例みられるが、実際の植物を歌ったのは「木に寄せる」に分類された1例のみ。「向つ峰の若桂の木」(7-1359)とあり、恋しい少女の未だ成熟せざる様子を若い桂木に譬えて詠む。他の3例は、古代中国の伝説・俗信を踏まえ、月の世界にあって枝葉が繁茂し芳香を発する巨樹と想像された桂木を詠む。湯原王の作歌には手に取って傍に寄せることのできない恋人を「月の内の桂のごとき」(4-632)と譬える。作者未詳歌では月人壮子が天の海を漕ぐために浮かべた月の船の楫を「桂楫」と詠む(10-2223)。同様に桂木を月の船の楫とみなす例としては、『懐風藻』文武天皇作の五言詩「月を詠む」に「月舟霧渚に移り、楓楫霞濱に泛かぶ」(15)等がある。また、10-2202番歌は秋の月が冴えわたって見える理由を、その中にある桂木が黄葉したために生じたこととみなすが、中国における桂は常緑樹であり、これは日本の桂木を土台として歌ったものとみられる。
執筆者 小林真美
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