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万葉神事語辞典


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項目名 かずら
項目名(旧かな) かづら
表記
Title
Kazura
テキスト内容 つる草や花などを輪にしたりして頭上に戴く飾りとしたもの。動詞形はかづらく。類似のものとしてはかざしがある。かづらは髪蔓(かみつら)の約で、蔓性植物の総称といわれる葛(2-101)と同源とされる。万葉集では、カヅラ(2-149)のほか、アヤメグサや花橘(3-423)、青柳(5-817)や春柳(5-840)、桜の花(8-1429)、早稲穂(8-1625)、さ百合の花(18-4086)、蓬(18-4116)、梅(19-4238)などが用いられている。『霊異記』上巻第一に小子部の栖軽が「緋の縵」を額につけて雷を捕らえにいく話があり、材質はわからないが、これは額に赤色の輪飾りをつけたものとみられる。このような植物を輪状にした髪飾りのほか、紀の安康天皇元年2月条の、樹枝形の玉飾りがついた冠と推定される「押木珠縵」、687(持統天皇元)年3月条の、仏前の荘厳用の華鬘に相当するとみられる殯宮の「華縵」などがあった。5月5日に菖蒲の葉を輪にして蘰に用いるのは古くからの風習のようで、『続日本紀』747(天平19)年5月5日条にみえる詔に、昔、5月5日の節には常に菖蒲を用いて蘰とした。このごろやめている。今後菖蒲の蘰をつけないで宮中に入ることがないように、とある。これは宮中のことであるが、民間ではこうした風習が続けて行われていたと推測されている。この菖蒲蘰は、折口信夫によれば「成男戒授受のしるし」だという(『全集17』)。蘰の本来の意味については、青柳を折り取って蘰にするのは千年をことほぐためだとうたわれるように(19-4289)、植物のもつ生命力にあやかって長寿を得ようとしたものと考えられている。また、菖蒲や蓬など香気の強い植物を用いることから、邪気を祓うためともみなされる。『旺文社』は、もとは神事に奉仕する者のしるしであったと説く。万葉集の時代では、もっぱら宴席の場などにおいて風流な装いとされていく。
執筆者 入江英弥