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万葉神事語辞典


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項目名 かし
表記 橿
Title
Kashi
テキスト内容 「樫」は材質が堅いことから作られた国字。万葉集では「橿実」(9-1742)とあり、「橿」字は『和名抄』にカシと訓むとある。しかし、「橿」は本来、モチノキ、またはマユミを表わす字であった。カシは、ブナ科コナラ属の常緑高木の総称で、日本にはアラカシ、ウバメガシ、アカガシ、シラガシ、ウラジロガシなどの種類がある。暖地に生え、晩春から初夏に花を咲かせる。葉は革のような硬さをもち、長楕円形ないし披針形で、一つの節に一枚ずつ生じ、互いに方向を異にしている。雌雄同株で、初夏、雄花はひも状の穂について垂れ下がる。秋に実るカシの木実は、ナラの木実とともに団栗(どんぐり)と呼ばれる。材質が堅いカシは木炭や弓矢などさまざまに用いられていた。「橿実之」(9-1742)は「独りかも寝む」の「独り」を導く枕詞である。カシの木の実は一殻に中身が一個しかないことから、独り寝を導く枕詞に用いられたと考えられるが、他に用例がなく、高橋虫麻呂の独創にかかる枕詞とも考えられる。また、カシは道具の素材として使われているだけでなく、信仰の対象でもあった。斉明天皇の和歌山県白浜温泉への行幸の時に額田王が作った歌(1-9)では、神聖な「可新」の木を歌っている(→厳橿)。紀の垂仁天皇25年条には、倭姫命が天照大神を磯城の厳橿の本に鎮座させ祀ったという記事を載せる。記にも雄略天皇が赤猪子のためにうたった歌謡に、御諸の「厳橿がもと」とあり、神の社にある神聖なカシの木が忌みはばかられるように近寄りがたい乙女と述べ、巫女のようなタブー的存在を象徴する木として考えられる。
執筆者 大脇由紀子
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橿