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万葉神事語辞典


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項目名 かぐやま
表記 香具山
Title
Kaguyama
テキスト内容 奈良県橿原市東南にある山。標高152メートル。耳成山・畝傍山を合わせて大和三山と呼ばれ、その中央に藤原京が造営された。京の東方を守護する山で太陽が昇る山、春の到来を告げる山である。伊予国風土記逸文に天山という山があるが、天から降って来た時に二つに分かれて、片端は倭に降り片端は此処に降ったので天山というとある。記紀には香具山の土は王権の支配権力を意味したほど重要な山である話が見られる。これは香具山が王の国見祭祀を行う聖山であったからで、万葉集では舒明天皇が香具山に登り国見をする伝えがある(1-2)のもその意味からである。香具山は「天降りつく天の香具山」(3-257、3-260)と詠まれることからも、天上から降ってきたという伝承は一般に知られていた。香具山は本来は高天原の山であり、そこは神々の聖山であった。その天の香具山を葦原の国に写し取り、王権の正統性を保証するのが地上の天の香具山であった。この聖山を中心に都造りが行われた。「藤原の御井の歌」は藤原京に関わる祝福の歌であるが、そこには「やすみしし わご大君 高照らす 日の皇子 荒たへの 藤井が原に 大御門 始めたまひて 埴安の 堤の上に あり立たし 見したまへば 大和の 青香具山は 日の経の 大き御門に 春山と しみさび立てり 畝傍の この瑞山は 日の緯の 大き御門に 瑞山と 山さびいます 耳梨の 青菅山は 背面の 大き御門に 宜しなへ 神さび立てり 名ぐはしき 吉野の山は 影面の 大き御門ゆ 雲居にそ 遠くありける」(1-52)と詠まれている。すなわち、香具山=日の経の門、畝傍山=日の緯の門、耳梨山=背面の門、吉野山=影面の門だというのであり、香具山は東の太陽の昇る太陽線を意味した。そうしたことから「ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも」(10-1812)のように、春の季節の到来を知らせる山として詠まれ、万葉びとはこの当たりから自然現象の移り変わりを意識し、多くの季節の歌を詠み始めたことが知られる。
執筆者 辰巳正明
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香具山