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万葉神事語辞典


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項目名 おや
表記 親・祖
Title
Oya
テキスト内容 ①子を産んだ人。また、他人の子を養育する人。父母・養父母。②祖先。先祖の人々を総称する語。①は、万葉集に「父母」をオヤと訓じた例(12-3077)が見えるが、一方で「母に違いぬ」を異伝で「親に違いぬ」とした例(14-3359)もあり、父母を総称してオヤという場合と、母親のみを指してオヤという場合とがあったことが知られる。また、万葉集には、「名前をおっしゃいな(言いません)。たとえオヤが気付こうとも」という意の歌が3首ある(3-362、363、12-3077)。これらは互いに異伝関係にあり広く流布した伝承歌と考えられ、オヤが子の名を管理する風習が一般であったことを物語る。同様の名の管理に関しては、「母が呼ぶ名前を申し上げたいけれど、道行く貴方が誰か解らないのでは」(12-3102)という歌もあり、子の名を管理するオヤとは基本的には母親であったようである。この当時、名を告げる告げないは婚姻に関わる大事であったわけで、そうした観点からすれば、恋の障害として歌われるオヤも(11-2360、14-3420)母親と考えてよいものと思われる。記でも、大国主神(大穴牟遅神)を八十神の迫害から救う「御祖命(みおやのみこと)」を始め、「御祖」とされる例は総て母と子の関係において用いられているという。②は記紀の系譜記事の中で「○○の祖(おや)」という形で氏族の祖先を表す例が最も多い。風土記(常陸国・筑波郡)には、「神祖尊(みおやのみこと)」が新嘗の夜に諸神の元を巡行する話が伝わる。この「神祖尊(みおやのみこと)」は何神か明らかにし難く、母神ではなく漠然と祖先の神をさすもの考えられている。これをいわゆる祖霊とすれば、富士の神が新嘗を理由に宿りを断っていることから、祖霊は新嘗に来訪し祭られるべき神とは別神とされていたことになる。万葉集では「祖の名」(3-443、18-4094)、「遠つ神祖(かむおや)」「祖の子ども」(18-4094)「祖の職(つかさ)」(20-4465)などと見える。いずれもが大伴氏関連の歌で、祖先の名や職掌を正しく受け継ぎ伝えていかねばならないという文脈で用いられている。
執筆者 渡部修