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万葉神事語辞典


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項目名 おきつくに
表記 沖つ国・奥つ国
Title
Okitsukuni
テキスト内容 沖にある国。「奥」は、オキ・オクと同根。遠く、深く、奥の方にある所をさす。沖の意。海、湖、川の岸から遠く離れたところをさす。オクには、「伊香保ろの 沿ひの榛原 ねもころに 奥をなかねそ まさかし良かば」(14-3410)のように、時間的に用いた例もある。万葉集に、「沖つ国 うしはく君が 塗り屋形 丹塗りの屋形 神が門渡る」(16-3888)がある。この歌は、「怕(おそ)ろしき物の歌三首」のなかの2首目にある。「沖つ国」は、海の彼方にある死者の国。不老不死であることから常世の国ともいう。死者の国を占有支配する神の丹塗りの屋形船が、神の海峡を渡ってゆくと歌う。海の沖は、海神の支配する所である。「沖行くや 赤ら小舟に つと遣らば けだし人見て 解き開け見むかも」(16-3868)の沖をゆく「赤ら小舟」は、死者の世界を占有支配する神の国をゆく丹塗りの小船である。一般的には、官船として理解されているが、死者の世界へ行く舟と考えられる。16-3869は「大船に 小舟引き添へ 潜くとも 志賀の荒男に 潜き逢はめやも」とあって、荒男は、海底の死者の国にいるのである。浦島の子が、「海界を過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘に…(中略)…常世に至り 海神の 神の宮の…(中略)…老いもせず 死にもせずして 永き世に ありけるものを」(9-1740)とある。海界を過ぎたところは、海神の領する国であり、不老不死の常世であり、死者の住む国でもある。それらを一括した概念が、沖つ国である。遠い海の彼方にある国について、人々は恐れながらも、一方では憧憬の念をもっていたのは、不老不死の国であり、現世に様々なものをもたらす、と考えていたからである。「天皇の 神の大御代に 田道間守 常世に渡り 八矛持ち 参ゐ出来し時 時じくの 香菓を」(19-4111)にみえる香菓も常世からもたらされたものである。
執筆者 阿部誠文