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万葉神事語辞典


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項目名 おおくちの
項目名(旧かな) おほくちの
表記 大口の
Title
Okuchino
テキスト内容 枕詞。大きな口を持つ狼の意で、地名の「真神(まかみ)の原」にかかる。万葉集では2例、「大口の 真神の原に」(8-1636)「大口の 真神の原ゆ」(13-3268)がある。真神の原とは、現在の奈良県高市郡明日香村(たかいちぐんあすかむら)の安居院(あんごいん)(飛鳥寺)の南に広がる平地で、真神とは狼のことである。大和国風土記逸文によると、昔、明日香の地に老いた狼がいて人を食べており、土地の人は恐れて大口神(おおくちのかみ)と言っていたので、その狼の住む所を大口真神原(おおくちのまかみがはら)と名付けたとする。狼を神とする例については、紀の欽明即位前紀に、秦大津父(はだのおおつち)という者が、山背(やましろ)国の紀伊郡(きのこおり)の深草里(ふかくさのさと)(京都市伏見区大亀谷)で、噛み合って血に汚れた二匹の狼に向かって、汝は貴(かしこ)き神であると言ったとする伝承がある。また『新訳華厳経音義』の倭訓には「狼、倭言大神也」とあり、和名抄や名義抄によっても「狼」がオホカミと訓まれたことが知られる。古代信仰では、神は畏怖すべきものを広くさす。中でも狼は人畜に害を加えたので恐れられ、神と呼ばれていた。
執筆者 山﨑かおり