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万葉神事語辞典


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項目名 うなてのもり
表記 卯名手の神社
Title
Unatenomori
テキスト内容 奈良県橿原市雲梯町にある雲梯神社。祝詞(出雲国造神賀詞)には「出雲の大穴持命が事代主命を大和の宇奈堤に派遣した」とあり、この神社が事代主神を祀ることが知られる。事代主神は、記では国譲り神話において父神である大国主神に葦原中国を天神御子に奉る旨を述べる。出雲で重要な役割を担う神ではあるが、本来は出雲と無縁の神が国譲り神話に組み込まれたと考えられている。事代主神はその神名から言葉を司る神と考えられる。神功皇后摂政前紀には皇后が神託を求めた時にあらわれた三神の中に「天事代虚事代玉籤入彦厳之事代神」の名がみえ、新羅征討からの凱旋の途上、船が進みえなくなったとき託宣を下す。また、壬申紀では、高市県主許梅に神懸かりして託宣を下す。このような記紀の用例から、事代主神は広く託宣を司る神とされている。しかし、その名義からすれば、憑依する神ということではなく、神に代わって神の言葉を述べる者が神格化されたとみるべきであろう(岡久生「事代主神の諸問題ー託宣と国譲りの物語ー」『古事記の神々上』(高科書店))。卯名手の神社は万葉に2例詠まれる。12-3100では、この神が思ってもいないのに思うと「言ふ」ことはお見通しであると、自身の言葉に偽りのないことを歌う。この歌には類歌があり、それぞれ「三笠の神」(4-561)「天地の神」(4-655)が詠まれている。7-1344は神社の菅を衣に書き付け着せてくれる子がいたらいいのにと歌う。この歌では「書付」の解釈にゆれがある。染める意が多いが、文字どおり着物に書き付けるとする(『大系』)意見もある。いずれにしろ、言葉に関わる呪的な行為とみてよいのではないか。「採れば神罰を蒙る菅」(『窪田評釈』)であり恋のために危険を冒すというのではあるまい。その点、「愛の誓いのことばにかかわる神」(『全注』)と解するのがふさわしい。
執筆者 清水明美