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万葉神事語辞典


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項目名 いわへるくに
項目名(旧かな) いはへるくに
表記 鎮へる国
Title
Iwaherukuni
テキスト内容 大切に守る国。万葉集に1例だけみられ、「やまとの国は」「大神の いはへる国そ」とうたわれる(19-4264)。「いはへる」は旧訓シヅムル。原文は「鎮在」で、『略解』が「鎮の字古訓しづむるとあれど、さては在の字余れり。いはふと訓むべき例多ければ、ここもいはへると訓めり。上にも伊波敝神たちともあり」と述べて、「いはへる」と訓むことを主張した。『古義』も「鎮は、鎮護の義もて書るなり」と説き、「鎮斎杉原」(7-1403)などの例をあげて、この訓みを採用する。以来、この訓みが用いられる。動詞「いはふ」は「い(斎)」に接尾語「はふ」が付いた語と考えられ、類義語には「いつく」がある。本来は吉事をもたらすため、忌み慎むことをさすといわれ、あとに残った私は幣を引いて「斎ひつつ」留守番をしよう(8-1453)、鹿を求めて待つあなたの「いはひ妻かも」(7-1262)などとあるように、旅や猟などに出掛けている者の無事を祈って、留守宅の家族らは潔斎するとうたわれる。それが、神聖なものとしてまつるとか、大切に守護するといった意になる。たとえば、「斎ひ児」(9-1807)は他人には手を触れさせないように大切に守り育てている子のこととされ、「いはふ杉」(4-712、13-3228)や「いはふ杉原」(7-1403)は、神の依代となる杉は神聖なものとして崇拝され、それを大切に守るという意に受け取れる。また、入唐使に対して「いはへ神たち」(19-4240)と、神々に旅の無事を守るように祈るといった内容の歌がある。これらの例から、「大神のいはへる国」は、大神が大切に守る日本の国という意に理解できる。「大神」については、『全註釈』が「いずれの神をさすかあきらかでない。天地の大御神の意か。やまとの国の鎮護の神とすれば、大和の大国霊の神であり、航海の神とすれば、住吉の神である」などと説く。
執筆者 入江英弥