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万葉神事語辞典


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項目名 いわ
項目名(旧かな) いは
表記 岩・巌・磐
Title
Iwa
テキスト内容 ①岩、大石。「磐《以波大石也》」(『和名抄』)。②接頭語的に用いられ、そのものが強固なものであることを示す。①は「石土毘古神を生みき。次に、石巣比売神を生みき」(神代記)とあるように、国生みの後に、2番目の神として生まれている。万葉集に「ま玉なす 二つの石を…(中略)…神ながら 神さびいます 奇し御魂 今の現に 尊きろかむ」(5-813)と、石を神として祀る歌がある。石や岩を尊いものとする信仰があった。「春草は 後はうつろふ 巌なす常磐にいませ 貴き我が君」(6-988)のように不変である故に、また「神さぶる 岩根こごしき み吉野の 水分山を 見れば悲しも」(7-1130)のように岩そのものの姿が神々しい故に尊ばれる。「鴨山の 岩根しまける 我をかも 知らにと妹が 待ちつつあるらむ」(2-223)、「岩根しまきて 死なましものを」(2-86)からすれば、「岩根しまく」は死の姿をさしている。「高山の 巌の上に いませつるかも」(3-420)、「高山の 巌の上に 君が臥やせる」(同-421)も同様である。「岩根さくみて なづみ来し」(2-210、213)は、地下に根をおろしたような岩に難儀する様を歌う。その意味で「波の上を い行きさぐくみ 岩の間を い行きもとほり」(4-509)も同様である。「さぐくむ」に似た意味の語に「こごし」がある。「岩が根の こごしき山を」(3-301)、「あしひきの岩根こごしみ」(3-414)がある。「古ゆ あり来にければ こごしかみ 岩の神さび」(17-4003)からすれば、険しい意ではなく、神々しい意が原義である。さらに岩に生えた植物も特別なものとされている。「なでしこは 秋咲くものを 君が家の 雪の巌に 咲けりけるかも」(19-4231)、「神さびて 巌に生ふる 松が根の 君が心は 忘れかねつも」(12-3047)などがそうである。②は「天雲に 磐船浮かべ」(19-4245)がみえる。そのほか、「磐櫲樟船」「磐境」「石楯」「石戸・磐戸」「磐座」などが、接頭語的用法で、記紀にみられる。
執筆者 阿部誠文