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万葉神事語辞典


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項目名 いぐし
表記 斎串
Title
Igushi
テキスト内容 呪いにより清められた杭。祭祀に用いられる。杭・杙に同じ。「い(斎)」は、神聖なものを意味する接頭語。「くし(串)」は櫛などとも同じく、霊力を持つものをいう。記紀にツノクヒ・イククヒの神が見える。万葉集に「斎串立て神酒据ゑ奉る神主のうずの玉陰見ればともしも」(13-3229)と見え、神主が斎串を立てて神酒を据えて神祭りをしている様子が詠まれている。記歌謡には「隠り国の 泊瀬の河の 上つ瀬に 斎杙を打ち 下つ瀬に 真杙を打ち 斎杙には 鏡を懸け 真杙には 真玉を懸け」のように、神祭りの方法が具体的に描かれている。これによれば河の上流に斎杙、下流に真杙を打ち、それらに鏡や玉を懸けるのだという。この形は記に天の香具山の五百津の真賢木を根こそぎに抜いて、上の枝に八尺の勾玉の五百津のみすまるの玉を取り付け、中の枝に八尺の鏡を取りかけ、下の枝に白にぎて青にぎてを取り垂れたという。この形態は世界樹に見られる聖木と思われ、それを可視化したのが斎串であろうと思われる。このことから見ると、斎串の原型は樹木の賢木にあり、それが簡略化されて斎杙となった可能性がある。
執筆者 辰巳正明