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万葉神事語辞典


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項目名 あめつちのはじめのとき
表記 天地之初時・乾坤之初時
Title
Ametsuchinohajimenotoki
テキスト内容 宇宙の時間的初源のみをいうことば。この世の始まりに対する神話的認識に支えられる。宇宙創世神話には世界的に剖判型・出産型・卵生型などが見られるが、剖判型神話(開闢神話)による表現である。紀では『三五歴記』『淮南子(天文訓)』に出典を持つ開闢神話が語られ記序にも開闢神話を語る。ただし、記本編は「天地初発之時」として、開闢神話である確証のとれない叙述となっている。記紀に共通するのはイザナキ・イザナミによる国生みだから、開闢神話は万葉びとが漢籍を学ぶうちに本来存した天地双分観と融合して、天地の始まりの具体的様子を語るものとして自然定着した(漢字文化圏共有の)神話だと考えた方がよい。事実、「ハジメノトキ」の用例は柿本人麻呂による記紀神話と枠組みを同じとする発想の神話的文脈に用いられるほか(2-167「日並皇子殯宮挽歌」)、作者未詳で七夕歌(漢籍に通暁した山上憶良の七夕歌ではワカレシトキが用いられている)、自家の歴史を踏まえた大伴家持の作の都合3首に見られるわけで、「あめつちのわかれしとき」より一般的であったと考える方が自然だろう。
執筆者 志水義夫