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万葉神事語辞典


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項目名 あまのはら
表記 天の原
Title
Amanohara
テキスト内容 ①大空・天空を表わす語。②天神の神の住む世界。①の意味では、万葉集に13例ほどあり、一般的な大空・天空を表す。だが、「天の原 ふりさけ見れば 白真弓 張りて縣けたり 夜路は吉けむ」(3-289)に典型だが、①の情景は、多くが夜または暗い情景を表している。また、「振り放け見る」という語と接続する例が多く、遠く仰ぎ見る、という行為と連接している。この「振り放け見る」という行為は、諸注でほぼ「遠く見ると」「振り仰いでみると」といった意味で解釈され、夜空やそこにうかぶ月や天の川などを眺めやる行為としてとらえられている。「見る」という語には、一般的には国見という呪的な行為が想起されるが、これらにはそのような意味は希薄で、叙景歌としての機能になっている。これに呪的な意味を認める歌としては、「天の原振りさけみれば大君のみ命は長く天足らしたり」(2-147)に見られるような挽歌の系統がある。挽歌に用いられている例がほかに2例あり(2-167、13-3324)、あるいは魂よばいのような意識が昇華したものかもしれない。①としての歌は、4例あり、「天地の 初めの時の 久方の 天の河原に 八百万 ちよろづかみの 神集ひ 集ひいまして 神計り 計りし時に」(2-167)に見られるように、神話を背景にした神の国の出来事を描いている。その情景を描かない場合は、始原の時間を想起させるものとして使用される(3-379)。この語に似た意味・構成の語としては当然「高天原」が想起されるが、「高天原」は記に設定された天上世界で、紀では希薄な意識だという指摘もあり、万葉集での関係性は不明であるが、①の用例の多くから見る限りではその意識は希薄であろう。
執筆者 渡辺正人