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万葉神事語辞典


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項目名 あまてらすかみ
表記 安麻泥良須可未
Title
Amaterasukami
テキスト内容 天上を照らす神。太陽の神。また、月の神とも考えられる。大伴家持が「七夕の歌」(18-4125)で詠むが、集中この1例のみ。牽牛織女の二星は、安の川を隔てて向かい立ち、袖を振り交わしため息をついている人たちだといい、それは天照らす神の御代からそのようであったのだという。七夕伝説は中国渡来であるが、すでに古代日本において変容を示し始めた例である。天照らす神は、記紀神話から考えると天照らす大神と思われるが、万葉集でアマテルは太陽にも月にも用いられる。①「久方乃天照月者神代尓加(久方の天照る月は神代にか)」(7-1080)、②「久方天光月隠去(久方の天照る月の隠れなば)」(11-2463)、③「比左可多能安麻弖流月波見都礼杼母(久方の天照る月は見つれども)」(15-3650) と詠まれ、久方の天を照らすのは月である。一方、これを太陽とする歌は、④「天地之 初時 久堅之 天河原尓 八百万 千万神之 神集 集座而 神分 分之時尓 天照 日女之命 〔一云、指上 日女之命〕天乎婆 所知食登(天地の初めの時久方の天の河原に八百万千万神の神集ひ集ひ座して神分ち分ちし時に天照らす日女の命〔一に云はく、指し上る日女の命〕天をば知らしめすと)」(2-167)、⑤「天光夜 日乃異尓干 佐比豆留夜 辛碓尓舂(天照るや日の異に干し囀るや唐臼に舂)」(16-3886)の例が見られる。紀では「天照る」はほとんどが天照大神として登場するから、天に照るのは天照らす大神にほかならない。万葉集では、天に照るのは日月いずれにも用いられることが知られるが、「照る」のみに限定すると、照る月が圧倒的多数詠まれているのである。七夕の歌にも「万代に照るべき月も雲隠り苦しきものぞ逢はむと思へど」(10-025)のように詠まれ、また「み空行く月読壮士」(7-1372)は月読の命のことであり、「月読みの光を清み」(15-3622)とも見える。天を照らす月も、七夕の歌として現れていることから見ると、天照らす神として認識されていた可能性もある。
執筆者 辰巳正明